企業4割、50ー60代に「人材過剰感」 処遇見直しで意欲低下の悪循環
企業の60代社員の活用に関して調査した。対象は企業規模300人以上の会社に勤める人事や総務職社員。3月7ー11日にインターネットを通じて実施し、有効回答は1028件。
正社員の人手不足感を年代別にみると、50代の社員に対して「過剰」「やや過剰」と答えた企業は計38%、60代社員については計36%にのぼった。大企業ほど50ー60代の人材過剰感が強かった。60代の人材を「過剰」と感じる企業は、そうでない企業に比べて「本人のモチベーションの低下」や「本人の生産性の低さ」に課題感を持つ割合が多かった。
50ー60代社員の活用方針について尋ねたところ、50代後半の社員には企業の67%が「能力・経験を最大限発揮してもらうことを求める」が、60代前半では52%、60代後半では43%にとどまった。60代以上の社員に求める「役割・責任」や「成果・生産性」の期待値も3ー4割の企業で軽減した。
60歳または65歳で処遇を見直す企業について、見直し時の年収変化をみると、年収が下がる企業が8ー9割を占めた。60歳で処遇を見直す企業では年収が平均28%下がった。年収引き下げ幅が大きい企業ほど、50代後半・60代前半社員のモチベーション低下に課題を感じる割合が高かった。
パーソル総研の藤井薫上席主任研究員は「人材不足のなか、正社員の4割を占める50ー60代の職責を軽減して『半・現役』扱いすることは看過できない」と指摘する。そのうえで「能力や経験は60歳を境に失われるものではない。基幹戦力として適所適材への配置や職務・役割に応じた処遇で納得感を高める必要がある」と述べる。
日本経済新聞 2025年7月1日 16:24
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC012Q90R00C25A7000000/